(English
translation will be posted soon.)
思いもよらなかったこと 1 ヴァージニアにて
こんなにも
顔剃り用かみそりを見つけるのが
難しいなんて
除毛テープなら簡単に見つかるの
鼻の下などに貼って
一気にはがすタイプのもの でも私
そんなもの使ったことがないし、
野蛮に見える
ましてや私
鼻の下にほくろがあるし
テープで一気にはがすのは、
あまりよくないんだと思うの
それで私、
日本からわざわざ買ってみた
貝のしるしの入った馴染みのもの
馬鹿らしいけれど
本体と同じだけの
送料をかけた国際便で
薬局はおまけとして、
絆創膏を入れてくれていた
数週間ぶりに産毛を剃ると、
ずいぶんとつるんとした肌
嬉しくて、外を歩いてみる
と、産毛の無い肌を
撫でてゆく秋風が
少し恥ずかしい気持ちにする
自分の輪郭が
はっきりしてしまった気がして
それでも、顔を上げて
異国の横断歩道を歩き出す
思いもしなかったこと 2 東京にて
東京に帰った夏、
新宿の西口 午後5時半 オフィス街
私は横断歩道で信号待ちをしていた
オフィスから出てきた人たちが
道路の向こう側に居るのを認めたとき
思わず涙が出た
どうしてこんなことで?とあなたは
聞くでしょうね、だけど、
横断歩道の向こう側に誰かがいることが
とても安心できるものなのです
ロアノークの横断歩道では、
向こう側にはいつも誰も居なくて
歩行者なんてそもそも少ないし、
歩道だって途中で消える
「歩くな」とでも言うように
歩いていることがマイノリティ
私がひとり歩行者ボタンを押し
渡るときに
あの大量のアメリカ人の車を
一気に止めて歩くときの
気まずさが嫌なのだと
考えていると、
信号が青に変わる
歩き出す東京の私は
気まずさに焦ることもない
英語を話すときの早口や
それゆえの間違いのような
早足ではなく、しっかりと
歩き出す
あいうえお、としっかりと
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