2011年10月3日月曜日

四角い空に丸い月


四角い空に丸い月

怪我なんてしていないのに 彼は
白い包帯を持ってくる

白い色で私の目の前を
黒くしたり
私の手に「しーっ」って
するためだよ

それから
「これからすることは
自由になるためのステップだよ」って言う
「一歩踏み出してごらん」
って囁く

ベッドの淵は
プールサイド
冷たい水に入るところで
乳首が硬くなって
その下の、こころまで
硬くする

暗い水の中では
気持ちの表裏が混乱してしまう
触られると安心するから
あなたにしがみつく
もがくと音がして怖い
もぐると音が消えて怖い

遠くで時計の
長針と短針が
何度かこすれる音がする頃
泳ぎ疲れたら
ふたりを
やめて
水からあがると
肌がヒリヒリしている
日に焼けたように
唇も乾いて

「またね」
っていう時の「ま」が痛いから
「じゃ」
って言って別れる

「また」がいつかも
分からない帰り道は、
空に
滑らかなコンパスで

すうっと
月を描きたい
大きな
満月を

薄紙のような
四角い空に
白く丸い
傷を付けて
大きな穴を開けて
そこから向こうへ
出て行くために

A.M  06/27/2010 


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