2011年10月16日日曜日

無題


「水が街を飲み込む」
それが比喩ではないほどの
津波
家や木が
流されるのではなく、
むしろ陸ごと
ひっぺがされる
目に見えない手が
荒々しく
本州の端をめくりあげる

アメリカ大陸の東で
この映像をオンラインで見ている
状況を
なんと形容してよいだろう
私の心が
知らない音を立てて
めくりあげられる朝
10メートルにもなる津波を
高台から撮った
被災者の声が震えている

日本列島が
なくなってしまうのではないかと
心配になる
本州の北から浸水し
シーソーのように
南端が持ち上がり
一気に沈むのではないかと
もう28の大人なのに
そんなことを考えている

海は青くなんかない 灰色だ
水しぶきは、白煙のように立ち上がり
街を、村を、市を、水で燻してゆく
魚、船、海草がうちあげられ
あるべきでないところに
ものや人が散乱する

画面には 24時間
緑の日本列島が映し出され
津波を知らせる
赤 橙 黄色が
日本のアウトラインを
太く塗りつぶしては
点滅している

私の意識の淵もまた
太い緋色に縁取られ
絶えず点滅しながら
眠れない夜が続く
ただただ、日本に帰りたい
私が今ここにいるのは
おかしいではないか

何か
間違っている気がしてならないのに
これはまた
ひとりの傍観者としての
たやすい同情なのかもしれず

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