2012年2月18日土曜日

詩のメモ(120218)

あなたが亡くなった翌日
東京でこの冬初めての雪が降った。

都市に生きる人びとは雪を嫌う。

決められた時間に同じ列車に乗り
見慣れた乗客と肩を寄せあい
一言も交わさずに揺られる。

繰り返される毎日のリズムを乱す雪への
人びとのささやかな抵抗は
何も変わりがないかのように
少し早めに家を出て
2本早い電車に乗ること。

途中で列車が停止しても
鈍行運転になっても
皆じっと
文庫本を開き
携帯電話を開き
一言も話さない。

葬儀手続きのため父は会社を休み
月曜日朝8時のTV
ものめずらしそうに見ている。

普段は離れて暮らす妹が
久々に使う自分用のマグカップを探している。

久々に忙しい朝に
母は、テーブルの上をパン、マーガリン、
コーヒー、サラダで埋め尽くしていく。

ふと父が、8時の気象情報を聞きながら
「今頃、通勤する人は大変だね」と言う。

きっと皆
雪で足をとられながら
慣れない足取りで
いつもの道を歩いているのだ。
無言のままで。

彼等に続くかのように、私たちも
静かに食事を始めた。

あなたが亡くなったこと以外
私たちの世界は何も変わりはない。

少しおぼつかない足取りでも
しっかり歩いていける。

そしてまたすぐ、日常に戻る。

日陰で硬くなった

残雪を除いて。

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